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アルカン - シャルル・ヴァランタン・アルカン(Charles Valentin Alkan)Ⅱ

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アルカン - シャルル・ヴァランタン・アルカン(Charles Valentin Alkan)

死因について

モンマルトル墓地にあるアルカンの墓
アルカンは1888年3月29日、74歳で永眠した。長年にわたって、彼は自宅の高い本棚でユダヤ教の経典タルムードを本棚から取りだそうと手を伸ばしたところ、本棚が倒れて下敷きになって死亡したと信じられてきた。この説はアレクサンドル・ベルタの1909年の記事に端を発している[14]。それ以外にも、アルカン一家の故郷の町であるメスでラビをしており、「シャーガットのアリヤ」として知られたアリヤ・レイブ・ベン・アシャー・グンツベルク[注 8]の言い伝えが基になっているのではないかという意見もある[15]。この話はピアニスト兼作曲家のイシドール・フィリップやドゥラボルドによって誇張されて伝えられたが、死因についての確定的な根拠はなく、不明であった[16]。伝説に異を唱えたのはヒュー・マクドナルド(Hugh MacDonald)である。彼は近年発見されたアルカンの守衛の書簡の記載から、守衛がアルカンのうめき声を聞いてかけつけたところ、彼が台所でポルテ・パラプリュイー("porte-parapluie" 外套や傘をかけるラック)の下敷きとなっているのを発見したとしている。彼はラックを支えにしようと掴んでその下敷きとなり、おそらく気絶したと考えられる。彼は寝室に運ばれて、その日の午後に息を引き取ったと伝えられる[17]。
アルカンは復活祭の日曜日であった4月1日に、パリのモンマルトル墓地のユダヤ人区画に埋葬された。それは同時代のアレヴィの墓からは程近い位置にある。アルカンの姉のセレステも、同じくモンマルトル墓地に眠っている。
アルカンの死を巡る主張には、ロナルド・スミスが著した伝記に事実として引かれ、その後に広く引用されたものがある。それはル・メネストレル誌[注 9]を出典とし、「アルカンは死んだ。彼は自らの存在を証明するために命を絶ったのだ。」で始まるものである。しかし、そのような死亡記事はル・メネストレル誌には掲載されておらず、現在まで同時代の雑誌のいずれにもそのような記載を確認できていない[注 10]。
これらの説は物証には乏しく、実際には親族との食事中に倒れたという説も有力視されている。

他の音楽家との交流

アルカンは、作品の贈答を通じて同時代の音楽家との交流を深めた。アルカンは完全な世捨て人であったかのように伝承されている事が多いが、実際にはパリ音楽院を辞職した後、アルカンの父親が経営していた音楽塾を継ぎ、またコスタラ社の顧問として細々と生活していた可能性が有力である。
アルカンが高齢になった後も、フランク、ルビンシテイン、ラヴィーナ、ヒラーから作品を献呈され、音楽理論家フェティスや大作曲家として大成したダンディの信頼も得て、その存在はフランス国内外で信頼されていた。シューマンが攻撃したことで知られるマイアベーアは、オペラ「預言者」からカットされた序曲をアルカンに手渡し、アルカンはその序曲を全曲ピアノソロへ編曲している。このエピソードからも、マイヤベーアと親交のあった事が伺える。その序曲のフルスコアは失われたが、編曲譜だけは現存している。
一連の59歳から始まった「リタイヤ・リサイタル・シリーズ」の終了後は、伝承された通りの隠遁生活であり、その時期の印象があまりにも強すぎたために多くの逸話が「創作」されたものと考えられている。ショパンとゴッチョーク(ゴットシャルク)は既に亡くなってしまい、リストは交響詩作家へ転進、タールベルクはピアノをやめ、1830年代に一世を風靡した一連のヴィルトゥオーゾは流行が過ぎると、その存在ごと無視された。アルカンもその例外ではなかったのである。

アルカンに献呈された作品

フェルディナント・ヒラー:『8小節変奏曲 Op.57』
(アルカンの作品39-12と極めて類似した形式で書かれている)
セザール・フランク:オルガン曲『交響的大曲 Op.17』嬰ヘ短調
アントン・ルビンシテイン:『ピアノ協奏曲第5番 Op.94』
ジャン=アンリ・ラヴィーナ:『3つのカプリス Op.6』
アルカンの実子に献呈された作品[編集]
カミーユ・サン=サーンス:『ピアノ協奏曲第3番 (サン=サーンス)』
アルカンが献呈した作品[編集]
『シュタイベルト[注 11]の主題に基づく変奏曲 Op.1』 (ピーエル・ジメルマン[注 3])
『3つの悲愴的な様式による3曲 Op.15』 (フランツ・リスト)
『室内協奏曲第1番 Op.10』 (ピーエル・ジメルマン)[18]
『歌曲集 第二集 Op.38』 (ユリウス・シュルホフ[注 12])
『全ての短調による練習曲 Op.39』 (フランソワ=ジョゼフ・フェティス)
『ドイツ風メヌエット Op.46』 (ジャン=アンリ・ラヴィーナ)
『3つの行進曲 Op.40』(ピアノ4手) (フェルディナント・ヒラー)

ピアノ技巧

アルカンの際立った技巧は彼の作品に求められる技術的、身体的難度を見れば明らかである。しかしながら、これらの技巧が音楽性を犠牲にしているわけではないことは、より繊細な作品群に目を向けることで分かる(「夜想曲 ロ長調 Op.22」や「エスキス集」などである)。ダンディは60代半ばのアルカンが、誰もいない部屋で「折れ曲がった、骨と皮ばかりの指で」エラール[注 6]のペダルピアノでバッハを弾いている姿を思い出し、こう述べている。「私が耳にしたのは、表情の豊かさという美点に根ざした、透明感のある見通しの良い演奏であった。」アルカンは後にベートーヴェンの「ピアノソナタ第31番」を演奏しており、これについてはダンディは以下のように評した。
ベートーヴェンの偉大な音詩に何が起こったかというと - アリオーソとフーガでは旋律が死そのものの神秘を貫き通して、眩い光の中立ち昇ってくるのである - 私は言葉にできなかった。(その演奏は)私にいまだ経験したことないような熱狂をもたらした。この演奏はリストではない - 技術的な完成度では劣るが - より親密であり人間的な感動をもたらしてくれた・・・[7]。
アルカンの晩年に彼に習い、またリスト門下でもあったある弟子も同じくアルカンの演奏に関して述べている。彼が回想するに、アルカンの演奏は「実年齢以上に老け衰えて見える彼のその姿にもかかわらず、驚くべき若々しさ」を維持していた[7]。

作風

アルカンのエラール[注 6]製グランドペダルピアノ。現在はパリの音楽の街博物館[注 13]に収められている。
アルカンは、ショパンと同様にほとんどピアノ作品のみを書き、リストと同様にピアノによる交響的表現を追求した。その実現のために彼の作品には超絶的な技巧の数々、極端な速度、高速での大きな跳躍、長時間の早い同音連打、幅の広い対位法的旋律の維持などが要求される。そのような彼の音楽は「恐ろしく」また「演奏不可能なほど」難しいとも評されてきた[7]。ピアニストのマルカンドレ・アムランはこう述べている。
アルカンという作曲家を知らずにその音楽を始めて耳にした時にほとんどの人がそう感じるだろうが、アルカンの音楽は難しすぎて演奏できないという一面を持っている(中略)しかしある意味では、私は彼の音楽が法外な技巧を用いているわけではないと思っている(中略)アルカンの非常に価値ある音楽は、それらの困難を克服するに足るものなのだ。

大ソナタ「四つの時代」 第2楽章"30代"からの抜粋。極めて複雑な対位法の処理が要求される。
代表作には練習曲「鉄道」 (Op.27) 、大ソナタ「四つの時代」 (Op.33) 、長短全調からなり超絶的技巧を要する練習曲(長調のOp.35と短調のOp.39)などがある。Op.39の4・5・6・7番は「独奏ピアノのための交響曲」、また8・9・10番は「独奏ピアノのための協奏曲」と銘打たれている。
アルカンには室内楽作品もあり、ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲などがそれにあたる。中でも最も異様なのは「ある鸚鵡の死によせる葬送行進曲 Marcia funebre, sulla morte d'un Pappagallo」(1859年)であり、3つのオーボエとファゴット、声楽のための曲である。
音楽的に、彼の発想の多くは型にはまらず、斬新ですらあった。他楽章制の作品では、後にデンマークの作曲家であるニールセンによく見られるような発展的調性(英語版)を採っている。例えば、「四つの時代」はニ長調に始まり嬰ト短調の終結に至る。彼は厳格にエンハーモニックの使用を避け、転調を行う際はダブルシャープやダブルフラットを用いた。そのため、ピアニストはしばしば見慣れない調性であるヘ長調のエンハーモニックである嬰ホ長調や、トリプルシャープなどの記号に遭遇することになる[注 14]。
後年になると高度な技巧を駆使した大規模形式による作品からは手を引き、「エスキス集 Op.63」に代表される小品集においてピアノの語法を探究した。この作品集では、ユダヤ教の教会旋法、半音階による無調的表現、トーン・クラスターなどの野心的なピアノ書法特徴的が見られる。また、シューマンやリスト、グノーらと同様にペダルピアノにも関心を持ち、作品をいくつか残している。1855年にはエラール社のペダルピアノ(ペダリエ)を公衆の前で実演した[20]。 彼はまた、1886年に作成した遺書に置いてこの楽器のためのコンクールを創設するため遺産から800フランを寄附することを希望している[21]。

受容

死後、彼の作品は20世紀の初めごろまではフェルッチョ・ブゾーニやハロルド・バウアーなどのヴィルトゥオーゾ・ピアニストたちに取り上げられていた。再評価の機運が高まってきたのは1970年代末に入ってからである。1977年にイギリスで、1984年にフランスでアルカン作品の普及を目的としたアルカン協会が設立されたことは、この動きを象徴するものである。ロナルド・スミスによる「短調による12の練習曲」の全曲録音は発表当時大きな話題となった。その後マイケル・ポンティによる「短調による12の練習曲」抜粋の録音、金澤攝による1984年の全曲演奏とジャック・ギボンズによる1995年の全曲演奏が共にライヴでなされ、この頃からマイナーレーベルの注目を集めるようになった。現在ではマルカンドレ・アムラン、スティーブン・オズボーン、ステファニー・マッカラム、森下唯、飯坂健らのピアニスト達が普及に努めている。2011年にはアテネでもジメルマン=アルカン国際音楽協会が催され、2012年4月にはコンクールが催されヨーロッパ各地から参加したピアニストたちがアルカン作品を演奏した[22]。


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アルカン:すべての短調による12の練習曲/ピアノ・ソナチネ/4つの時代/悲愴的ジャンルの3曲(マルテンポ)
ALKAN, C.-V.: Études dans les tons mineurs / Sonatine / Les quatre âges / 3 Morceaux dans le genre pathétique (Genius-Enigma) (Maltempo)

このページのURL http://ml.naxos.jp/album/PCLM0089

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アルカン:すべての長調による12の練習曲集 Op. 35/すべての短調による12の練習曲集より「イソップの饗宴」, 「悪魔のスケルツォ」(リンガイセン)
ALKAN: 12 Etudes, Op. 35 / Le Festin d'Esope / Scherzo Diabolico

このページのURL http://ml.naxos.jp/album/8.555495

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アルカン:前奏曲集 Op. 31 (マルタン)
ALKAN: Preludes, Op. 31

このページのURL http://ml.naxos.jp/album/8.223284

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アルカン:大ソナタ/3つの大練習曲(A. フランツ)
ALKAN, C.-V.: Grande sonate / 3 Grandes etudes (A. Frantz)


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アルカン:鉄道/即興曲集より/練習曲集より/エスキース(マルタン)
ALKAN: Railway (The) / Preludes / Etudes / Esquisses

このページのURL http://ml.naxos.jp/album/8.553434

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アルカン:トランスクリプション全集 1 - モーツァルト(ロペス)
ALKAN, C.-V.: Transcriptions (Complete), Vol. 1 - Mozart (J.R. Lopez)

このページのURL http://ml.naxos.jp/album/TOCC0240

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アルカン:ピアノ・デュオ作品全集(ゴールドストーン/クレモウ)
ALKAN, C.-V.: Piano Duos and Duets (Complete) (Goldstone and Clemmow)

このページのURL http://ml.naxos.jp/album/TOCC0070

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アルカン:ピアノ作品集(ギボンズ)
ALKAN, C.-V.: Piano Music (J. Gibbons)


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アルカン:ピアノ作品集 - 夜想曲第1番/大ソナタ/エスキース(アモイヤル)
ALKAN, C.-V.: Piano Works - Premier nocturne / Grande sonate / Esquisses (Amoyel)

このページのURL http://ml.naxos.jp/album/LDV11D

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アルカン:3つの華麗なる練習曲/演奏会用練習曲「騎士」/鉄道/片手ずつと両手のための3つの大練習曲 (マルタン)
ALKAN, C.-V.: Etudes, Opp. 12 and 76 (Martin)

このページのURL http://ml.naxos.jp/album/8.223500

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ジェズアルド/クーナウ/シュッツ/ロッティ/ブルックナー/デュボワ/レーガー:合唱作品集(ウィーン室内合唱団)
Choral Concert: Vienna Chamber Choir - GESUALDO, C. / KUHNAU, J. / SCHÜTZ, H. / LOTTI, A. / BRUCKNER, A. / DUBOIS, A. / REGER, M. (O crux)


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フランスの熱狂
Folie francaise (La)


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Les Virtuoses De L'impossible
Virtuoses De L'impossible (Les)


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アルカン:ピアノ作品集(スミス)
ALKAN, C.-V.: Piano Works (Smith)


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アルカン:ピアノ作品集(マストロプリミアーノ)
ALKAN, C.-V.: Piano Solo Music (Mastroprimiano)

このページのURL http://ml.naxos.jp/album/BC94341

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クラクストン/モンポウ/シマノフスキ/アルカン:稀少ピアノ作品集(2015年フーズム城音楽祭ライヴ)
Piano Music - CRAXTON, H. / MOMPOU, F. / SZYMANOWSKI, K. / ALKAN, C.-V. (Rarities of Piano Music at Schloss vor Husum, 2015 Festival)


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芸術と音楽:ドガ - その時代の音楽
Art and Music: Degas - Music of His Time

このページのURL http://ml.naxos.jp/album/8.558144

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ツェルニー/ショパン/リスト/タウジヒ/ドホナーニ:ピアノ作品集(1987-1988年フーズム城音楽祭ライヴ)(アムラン/ポンティ/バーマン)
Piano Music - CZERNY, C. / CHOPIN, F. / LISZT, F. / TAUSIG, C. / DOHNANYI, E. (Rarities of Piano Music at Schloss vor Husum, 1987-1988 Festival)


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ツェルニー/ショパン/リスト/タウジヒ/ドホナーニ:稀少ピアノ作品集(1995年度フーズム城音楽祭ライヴ録音)(クエルティ/スミス/ベルマン)
Piano Music - CZERNY, C. / CHOPIN, F. / LISZT, F. / TAUSIG, C. / DOHNANYI, E. (Rarities of Piano Music at Schloss vor Husum, 1995 Festival)






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